栽培について

用土の選定

狭間寸胴鉢は通気性が良いため一般的な鉢より乾きやすい特長があります。ここでは主に夏越しの実験で得たデータを基に各高山植物と用土の関係をみたいと思います。

●保水係数

高山植物用として使用している軟・硬質の火山礫、改良用土や調整用土など13種類の保水性能を調査する。含水率は用土を10分ほど水に浸漬し用土に含まれる水分の割合(重量比)から算出し、その割合に応じて計数化する。水持特性は用土に含んだ水分が炎天下で半減するまでの時間で判定し、その時間に応じて計数化する。含水率と水持特性を合計したものを保水係数とする。各用土の保水係数を以下に示す。

用土 含水率 水持特性 保水係数
富士砂 1 2 3
硬質赤玉 2 4 6
桐生砂 3 4 7
硬質鹿沼 6 4 10
日向土 4 6 10
軽石 5 6 11
日光砂 7 6 13
蝦夷砂 8 8 16
軟質鹿沼 9 8 17
バーミキュライト 10 10 20
腐葉土 11 12 23
くんたん 12 12 24
ビートモス 13 12 25

●乾湿度

上表で各用土の保水係数を算出したが、高山植物の用土は通常混合して使うので、各用土の配合割合と保水係数から下記式により乾湿度を求める。

乾湿度=配合割合×保水係数

下表のキバナシャクナゲに用いた用土の乾湿度を算出すると

(20×13)+(30×10)+(50×16)=1360

となる。

用土〔保水係数〕 キバナシャクナゲ コマクサ

日光砂〔13〕 20
硬質鹿沼〔10〕 30
軟質鹿沼〔17〕
焼赤玉〔6〕

蝦夷砂〔16〕 50
日向土〔10〕 50
軽石〔11〕
富士砂〔3〕 50
桐生砂〔7〕

腐葉土〔23〕
くんたん〔24〕
ビートモス〔25〕
調
バーミキュライト〔20〕
パーライト〔0〕
乾湿度 1360 650

●最適用土の選定

これまでの夏季実験で明らかとなった乾湿度と高山植物の関係を下表に示す。ホウオウシャジンやコマクサは乾燥気味の用土を好む。アツモリソウ辺りから中間帯に位置しているが、ツツジ・シャクナゲ等はは1000~1500に入っている。
湿潤との境界は明確になってないが岩ツツジがもっとも湿潤を好む。『乾湿度による用土の選定』の試みは始まったばかりである。まだデータも少なく満足できるものになってないがこれからも夏越しの実験を積み重ね、より確かなものとしたい。

乾湿度 高山植物 用土 備考


 



 

 
湿
380 ホウオウシャジン 富士砂80、桐生20 深鉢
|
650 コマクサ 日向土50、富士砂50 深鉢
|
1030 アツモリソウ 日光砂20、硬質鹿沼20、焼赤玉30、日向土20、腐葉土10 浅鉢
1040 コケモモ 日光砂40、硬質鹿沼40、赤玉20
|
1265 シラネアオイ 日光15、硬質鹿沼20、蝦夷25、赤玉15、日向15、腐葉土10
1360 キバナシャクナゲ 日光砂20、硬質鹿沼30、蝦夷砂50
1360 ハクサンシャクナゲ 日光20、硬質鹿沼30、蝦夷砂50
1380 エゾツツジ 日光砂45、日向土25、ピートモス20・くんたん10 湿潤タイプ
1390 ウラジロヨウラク 硬質鹿沼60、赤玉10、ピートモス20、くんたん10
1400 岩ウチワ 日光70、赤玉10、ピートモス15、くんたん5
1560 屋久島ヨウラク 日光70、ピートモス20、くんたん10
|
1775 岩ツツジ 日光20、硬質鹿沼30、腐葉土25、くんたん5、ピートモス20

通気性の調整

鉢底ネットは標準では1枚だが、鉢底あるいは鉢壁にネットを増やすことにより通気性の調節をすることができる。

≪結果≫
鉢底ネットを2枚に増やすと冷却効果は若干向上する。 これより用土を湿潤気味にしたいときは鉢底ネットを増やすと効果ある。鉢壁にネットを巻くと空気の流入により冷却効果1~2℃低下する。これより鉢壁ネットは乾燥気味に育てるのに効果的である。

網ネット 鉢内の状態
鉢底1枚 標準
鉢底2枚 湿潤気味となる
鉢底1枚、鉢壁1枚 乾燥気味となる

鉢内温度

鉢底が網ネットになっているため風通しが良すぎ、深さ方向での温度のバラツキが懸念されため鉢の全深さでの温度を調査した。測定位置は、上から2cm、4.5cm、7cm(鉢底から1cm)の3箇所。

≪結果≫
いずれの場所ほぼ同じ温度で、深さによる影響はなかった。

遮光ネット

≪結果≫
直射日光と遮光ネット下における放射温度は終始遮光ネットが下回り、平均で3.6℃の差があった。梅雨時の雨除けと合わせ夏越しには必ず設置したい。

冬の管理

乾燥を嫌う場合は狭間にはテープを巻き、また高台下には板を敷くなど鉢底下の乾燥を防ぐ必要がある。また最低気温がー15℃を繰り返すような環境では凍結崩壊を防ぐため雨水の当たる屋外は避けたい。